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Reports 鼻行類::生きていた鼻行類

ハナアルキは絶滅していなかったのか?

NSRでは、これまで公開されたことのない写真と情報を入手しました。
ここに、協力していただいた新井和人氏(国立自然史博物館)に厚く感謝いたします。

1941年にハイアイアイ群島という生物地理的に特異な環境で新しいほ乳類の目として発見されていながら、
統括的な研究の成果が発表される直前に約200kmの至近距離で核実験が行われた為、不幸にして絶滅してしまった鼻行類。しかし、実は、1972年に鼻行類の一種と思われる小型哺乳類が捕獲されていた事実が明らかになった。

 捕獲されたのは、ヘッケルムカシハナアルキによく似た動物である。この動物は、1972年の11月に、東京関税局の職員により、国立自然史博物館に持ち込まれたものである。ワシントン条約によって輸入を禁止されている多くの他の動物とともに密輸されたものを差し押さえた東京関税局員が、この正体不明の動物の輸入が違法なのかどうかの判断に迷い、鑑定を依頼したものだ。ただし、輸入業者は、中国経由の動物専門貿易商から買ったと供述しており、また、問題の中国の貿易商はマレーシアの現地人から買い付けたと主張しているなど、複雑な経路で複数の業者の手によって輸入されている為、この動物が実際にどこで捕獲されたのかは不明であった。

 そこで、国立自然史博物館ではこの動物の同定を試みたわけだが、結局、このような大きな鼻を持つ小型哺乳類はげっ歯目にも、その他の分類群にも見当たらなかった。しかし唯一、かつて報告され、絶滅したとされる鼻行類のヘッケルムカシハナアルキ(Archirrhina haeckelii)がもっともこの動物の特徴と一致していたのだ。

 ただし、この動物が鼻行類発見当初にムカシハナアルキ科で唯一の現生種とされたヘッケルムカシハナアルキだと断言できるわけでもない。写真では体の下に丸めているため分かりづらいが、この動物の尾は細く、体長の1/3ほどしかない。ヘッケルムカシハナアルキの尾は、長い毛に被われており、体長と同じかそれより長いので、完全にヘッケルムカシハナアルキの特徴と一致しているわけではないからだ。

 いずれにせよ、この動物は新種の可能性が高く、またムカシハナアルキの一種と思われたので研究への期待が高まったが、残念なことにこの個体は博物館に持ち込まれた時にすでにかなり衰弱しており、間もなく死亡してしまった。

 結局、生態、行動はおろか、採集地も不明で、また世界的にも同種と思われるものがこの1個体しか見つからなかった為に、生物学的には詳細な研究をすることができず、論理的には、よく知られている小型哺乳類の奇形という可能性も捨てきれなかった為に、新種、あるいは鼻行類の再発見として発表されることはなかった。

 しかし、当時の研究者の多くは、科学的に証明ができない以上この謎の動物をハナアルキとして公式に発表することはできなかったが、個人的な見解ではおそらくヘッケルムカシハナアルキの近縁種がどこかで生き延びていたか飼育されていたのであろう、と語っていたそうだ。

※なお、これらの資料は、新井氏の個人的な厚意によってNSRに提供されたものであり、国立自然史博物館の正式な見解として公表されるものではありません。


参考資料:ヘッケルムカシハナアルキについて


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